Vol.11「湿気に要注意」
Text : 田中のり子
今年は桜の開花が記録的な早さでしたが、梅雨入りも(特に西日本)、びっくりするほど早かったですね。洗濯物がカラリと乾かない、じめじめ不快な季節がやってまいりました。この湿気というもの、普段あまり意識していないかもしれませんが、健康にとってはかなり要注意な存在。東洋医学では、病気の原因を「邪気(じゃき)」と呼びますが、この湿気は「湿邪(しつじゃ)」(=湿気の邪気)と呼ばれる、病を引き起こす危険なモノでもあるのです。
「梅雨時は体がむくみやすい」というのはよく言われることですが、外気に湿気が多いと体の中も、ちょっとしたことで流れがせき止められた水たまりのような状態になりがちです。さらに胃腸は、この「湿邪」が大大大、大の苦手。なので梅雨どきはお腹が張ったり、消化不良を起こしたり、下痢になったりと、消化器系のトラブルがいつもより頻繁に起きやすくなってしまうのです。
私はもともと胃腸関係があまり丈夫ではないので、梅雨どきはたいていお腹を壊してしまいます。そしてそのまま食欲を落として、本格的な夏がくる前に、すでに夏バテ……というのが例年のパターンでした。しかし『お手軽気血ごはん』(文化出版局)の制作で、「源保堂鍼灸院」の瀬戸佳子先生とお仕事をしたおかげで、昨年さまざまな「梅雨を乗り切る知恵」を伝授していただきました。
胃腸に湿気をためないためには、
・甘いもの
・冷たいもの
・生もの
・油っぽいもの
・味の濃いもの
をできるだけ避け、代わりに①湿気を取るもの ②体内の水分を動かすもの ③胃腸の働きを高めるもの を食べるようにします。①は小豆やそら豆、いんげん豆などの豆類、冬瓜やきゅうりの瓜類、麦類、きのこ、海藻類など。②はカレー粉や山椒、しょうが、しそといったスパイスや薬味類。③は味噌や梅干し、米麹などの発酵食品、いも類や穀類など。
梅雨どきで気温が上がったときなど、「スイカやアイスが食べたいなあ」と思っても、パーンと晴れ渡る梅雨明けまでぐっと我慢。その代わり、水はけがよくなるもの、お腹を冷やさないものを食べて、胃腸を守ります。
私がこの時季朝ごはんによく食べるのは、押し麦のお粥。味噌やかつおぶし、梅干しを、そのときどきの気分でトッピングします。押し麦の原材料である大麦は、体の余分な熱を取り、胃腸の調子を整え、余分な水分を排出してくれる働きがあるとされています。
仕事の合間には、利尿作用があると言われているスギナ茶を飲むように。これは春先に近所で摘んだスギナを乾燥させて作りました。
またこれは盲点なのですが、雨に濡れた服や靴下も、体にはかなり負担になるのだとか。大雨になりそうなときは、着替えの予備などを持ち歩くことも大切だそうで、髪を洗ったあとは必ずドライヤーで乾かし、室内干しも最小限に。「梅雨どきは体調を崩しがち」と自覚がある人は、乾燥機や除湿機といった文明の利器も、積極的に活用したほうがいいのだそうです。
今年から私も「今日は湿度がひどいな」という日は、連日でも布団乾燥機で布団をカラリと乾かしてから眠るようにしました。これはかなり快適で、湿度で体が冷えるように感じる方、寝苦しさを感じている方には、ぜひおすすめですよ。
(プロフィール)
衣食住、暮らしまわりの書籍の編集、雑誌のライターとして活動する。からだとこころに関する取材も多く、フラワーエッセンスや漢方について勉強中。『からだとこころを整える』(エクスナレッジ)がある。編集を担当した『1週間で必ず体がラクになる お手軽気血ごはん』(文化出版局)が好評発売中。