Vol.15「私の秋の乾燥対策」

Text : 田中のり子

初秋は雨が続きましたが、季節が深まるにつれ、空気もカラリと乾燥してきました。植物の水分も少しずつ減り、葉が枯れたり、実がぎゅっと引き締まったり、冬に向けて収斂していく時季です。そんな「秋の養生」の要は、「乾燥」対策と言われています。そういえば朝起きて、「肌がピキッと乾燥しているな~」と感じることが多くなってきましたが、乾燥は意識すると、さまざまな不調を引き起こす原因になるのです。

代表的なのは、咳や喉の痛み、ぜんそくの悪化など。東洋医学では体内のさまざまな働きを「五臓」と呼んで分類し、季節や色、感情などに対応させていますが、秋の臓器は「肺」。この「肺」が弱まると、上記のような呼吸器系のトラブルが増えていきます。この「肺」は、乾燥することが何よりキライで、いかに「潤い」をキープできるかが、秋の養生の大切なポイントとなっているのです。ちょうどこの季節になると「新しい美容クリームが欲しいな」「ハンドクリームを新調しないと」なんて考えることが増えますが、潤いが必要なのは、スキンケアだけではないのですね。

東洋医学ではこの「肺」と、「大腸」「皮膚」は関連していると考えます。肺の調子が悪いと腸も弱ったり、大腸の状態が悪いと肌が荒れたりするのです。そして乾燥すると肺が弱って咳や喉の痛みといった症状が出るように、大腸も乾燥すると、便が乾燥して便秘になりやすくなるというのです。この「腸が乾燥する」というフレーズ、初めて聞いたとき「内臓も乾燥するんだ?!」と、ものすごく驚きました。

しかしそういう言葉を知ってから、2年くらい体調を観察していると……「確かに、これは乾燥しているのかも」という感覚が分かってきました。夏はスムーズだったお通じが、何ともすっきりしない。健康にとって「出すこと」は、「入れること」と同じくらい大事なことですから、結構ゆゆしき問題です。

乾燥するなら、水分を取ればいいんじゃないの?」と思いがちですが、液体で体内に入ったものは、そのままザバーッと液体のまま、尿として外に出てしまうことがほとんど。体内に「潤い」をもたらすためには、潤わせるための食材を食べないといけないのです。

 


手元にある『薬膳食典 食物性味表』(日本中医食養学会刊)を見てみると、肺を潤す効能がある食べ物(「潤肺」の食材)は、山いも、きくらげ、白きくらげ、ズッキーニ、ゆり根、柿、干し柿、すだち、梨、アーモンド、ぎんなん、落花生、松の実など。腸を潤す食べ物(「通便・潤腸」の食材)は、菊いも、こんにゃく、さつまいも、納豆、えのきだけ、おくら、しめじ、白菜、ほうれん草、舞茸、アーモンド、くるみ、松の実、落花生、もずく、牛乳、はちみつなど。こうして見てみると、きのこやナッツ類など、秋に旬を迎える食材が多いのが特徴ですね。やはり旬の食材は、その季節の養生に必要なものが揃っているのです。

ということでわが家でも、秋はきのこやナッツ類をよく食べるようにしています。肉と野菜の炒め物にナッツを加えてみたり、落花生の炊き込みごはんを作ったり。きのこは鍋やお味噌汁、青菜と一緒に蒸しものにしたりして楽しんでいます。



不思議ですが、「お通じが今ひとつだな」というときは、いくらリップクリームを塗っても、唇がかさかさで皮がむけてしまうこともあったのに、体が潤ってくると、特に意識して塗らなくても、唇がふっくらしてきます。気になっていた目の周りの乾燥や喉のイガイガも、そこまで辛くなくなってきました。「食材で体を潤す」ことを意識するだけで、結構変わるものなのです。

私の乾燥対策としては他に、以前壊れて処分したままにしていた加湿器を、新たに買いなおしました。新型コロナウィルスは乾燥した空気を好むという説もあり、昨年は加湿器がかなり売り上げを伸ばしたようですね。年末になって慌てて探すと、気に入ったものが品切れ……ということもあるようなので、早めに買っておいたほうがいいですよね。そして昨年から愛用している「通販生活」の「のどミスト」も使い始め、友人からプレゼントとしていただいていたハンドクリームを下ろしました。


そうそう、「肺」は「悲しみ」という感情とも深い関係にあって、「秋になるともの悲しくなる」なんてよく言われますよね。肺の機能が低下すると、元気が出ない、落ち込みやすいといった精神状態にもなりやすくなるらしい。逆に考えると、そんな気分になってしまったら、「肺や腸は潤っているかな?」と振り返ってみるのもいいかもしれません。私も何か「気分がめいるな~」というときは、友人のAさんから「気持ちがふさぎ込んでいるときにいいよ」と教わった、「FES」の「ハーバルフラワーオイル・セントジョンズシールド」をお腹や肺のあたりに塗って眠るようにしています。

これから年末に向けて日もますます短くなり、仕事も忙しくなったりする時季です。どうぞ肺や大腸をケアして、心と体を温かくしてお過ごしくださいね。

 

(プロフィール)

衣食住、暮らしまわりの書籍の編集、雑誌のライターとして活動する。からだとこころに関する取材も多く、フラワーエッセンスや漢方について勉強中。『からだとこころを整える』(エクスナレッジ)がある。編集を担当した『1週間で必ず体がラクになる お手軽気血ごはん』(文化出版局)が好評発売中。


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