Vol.2 「不思議なフラワーエッセンス」
Text : 田中のり子
エドワード・バッチ博士を知っていますか。1886年生まれのイギリス人医師で、「フラワーエッセンス」の生みの親として知られている人物です。彼はもともと当時医療の最先端である細菌学者として、華々しく活躍していました。ところが彼が32歳のとき、全世界で「スペイン風邪」として知られるインフルエンザが大流行、何と2000万人もの方が亡くなり、感染者はその50倍にもなったそうです。新型コロナウィルスが流行してから、感染症の歴史として、テレビやインターネットで、この「スペイン風邪」という単語を目にした人も多いのではないでしょうか。ちなみにこの連載をさせていただいている松本「ラボラトリオ」の建物も、もともとはこのスペイン風邪で多くの人を助けた薬局があった場所だそうですよ。
未曾有の感染症が猛威をふるう中、バッチ博士は「同じような体調や条件の人でも、インフルエンザに感染する人といない人がいる。その違いは何だろう」という疑問を持ちます。ざっくりまとめると、「怖がりすぎる人、心身に極端な不調和がある人は、発症しやすい」。そんな確信を得て、健康と感情の状態との関係の重要性に気付き、やがてフラワーエッセンスの発見へと結びついていくのです。
フラワーエッセンスとは、植物の波動を水に写し込んだもの。きれいな場所で育った花や植物を朝いちばんに摘み、澄んだ天然水に浮かべて、太陽に当てておく。そうして植物のエネルギーを水に転写させ、ブランデーなどを加えて安定させるという方法で作られます(やがてそれを発展させ、煮沸する方法で作られるようになったものもあります)。アロマオイルなどと違い、植物の抽出成分は含まれておらず、香りもありません。けれどもその植物が持つエネルギーが人のこころに作用し、ゆがみを整え、バランスを取り戻すことによって、癒しに導いてくれるというのです。
こう書くと何だか、「おまじないのようなもの?」と思われがちですが、医師であるバッチ博士が体系化させた38種類の「バッチフラワーレメディ」は、実際に医療的効果を次々に上げていきました。世界各国で愛用され、研究も重ねられ、すでに80年以上の年月が経っているのです。その仕組みは、現在の科学では解明できていませんが、でもたとえば鍼灸の「経絡(気の通り道として考えられているもの)」なども、よくよく考えたら物理的に存在するものではありません。けれども2000年以上の臨床の中で、「何か分からないけど、確かに存在する」と有効性が認められ、鍼灸医療の現場で役立てられています。フラワーエッセンスも、単なるおまじないレベルのものであったら、こんなに長く、こんなに広く、活用されていないのではないかと思うのです。
日本では法律の関係もあり、医療行為として活用されることは認められていませんが、フラワーエッセンスはさまざまな癒しの場所で使われていて、個人的に愛用する人も年々増えています。何より安心なのは、副作用がないところ。響く人には響くけれど、そうでない人には何も起こらず無害。普段私たちが意識している顕在意識ではなく、無意識の領域である潜在意識の部分に効いてくるので、「ふと気づいたら」「知らない間に」こころのありようが変化して、それがからだの不調にも作用していくという仕組みなのです。
でもこんなこと書きつつ、正直私がフラワーエッセンスを使い始めたときも、「ホンマかいな?」「怪しいんでないの?」と、こころの中で関西のおっちゃんがツッコミを入れているような感じでありました。ところが私は、もともといろんなエネルギーに影響を受けやすいタイプ。「気がいい」と言われる場所に行くと体調がよくなるし、どんなに気のせいと言われようとも、携帯電話で10分も話すと、電磁波で頭がガンガン痛んでくるような人間で、フラワーエッセンスも(たとえ自分が飲んだことを忘れたりしていても)、ふり返ると「効いているかも……!」ということがあまりにも多く、真剣に学んでみようと思った経緯があったのでした。実は今でも「効く人と、効かない人がいるなあ」というのが正直な実感です。効かない人は、効かない(あるいは、フラワーエッセンスによる変化が自覚しにくい)。でも効く人にとっては、いろんなことがスムーズになり生きていくのがラクになるような、うれしい可能性があるアイテムだと思っているのです。
前置きが長くなりましたが、こんな時期におすすめのフラワーエッセンスをいくつか。こちらは私のフラワーエッセンスの師匠である、「スペースハナ」の谷口みよ子先生(*1)が講座のときに教えてくださったものです。
「クラブアップル」は「浄化のレメディ」として有名なエッセンスで、些細なことが気になって、バランスを失っている人に。「ウォールナット」は「防御のレメディ」。まわりの影響を受けやすい人や変化に対応するのが難しいと感じている人に。たとえば仕事や用事があってどうしても外出しなくてはいけないときに、「浄化して守る」この2本をセットにしておくと、お守りを持っているように安心します。
また4月頭の自粛生活がスタートしたばかりの頃は、夜に布団に入ってもショックなニュースが気になったり、将来の不安が頭の中を駆け巡ったりして、なかなか眠れない日々が続きました。そんなときには「ホワイトチェストナット」を飲んでおくと、不思議と堂々めぐりの思考が収まり、ぐっすり眠れるようになりました。またコロナのショックが長引いて気持ち的に疲れてしまう、一応仕事があるのになかなかやる気が起こらないときには「ホーンビーム」を。飲んでいるとなぜか気持ちが切り変わり、さまざまな気力がよみがえってきました。
私は飲んだ前と後の、自分のこころの変化を観察して、知識だけでなく、人体実験を絡めながらフラワーエッセンスを学び続けています。自分自身が38種類を網羅するのはまだ先になりそうですが、こころのありようを観察するのにうってつけなコロナ自粛期間を通じて、急速に経験値が上がっているように感じます。
(プロフィール)
衣食住、暮らしまわりの書籍の編集、雑誌のライターとして活動する。からだとこころに関する取材も多く、フラワーエッセンスや漢方について勉強中。著書に『暮らしが変わる仕事』(誠文堂新光社)、『からだとこころを整える』(エクスナレッジ)がある。
(*1)谷口みよ子 スペースハナ http://spacehana.net