第10回 「fruits of life」デザイナー
大橋利枝子さん 

 


「元オリーブ少女ですから、シェーカースタイルには長年の憧れがあります。凛とした佇まいに惹かれて……シェーカー家具を見るのも好きでしたし、シェーカースタイルの洋書も持っていましたよ」ちなみにボックスが置かれたデスクは、福岡県うきは市にある家具メーカー「杉工場」のもの。天板の上に小引き出しが置かれていますが、その引き出しの深さが、オーバルボックス1サイズの高さに程よくて、この場所に置くのが定位置になっているそうです。この机も、シェーカー家具のデザイン要素を取り入れているのだとか。
 
「松本の『ラボラトリオ』で購入した5サイズのボックスは、その時期その時期でいろんなものを入れてきましたが、今は中国茶器類を。実は、いずれ茶箱(点前道具一式を収納して持ち運びをするための箱)にしたいという夢もあって(笑)、その前段階として、中国茶の道具類を入れている感じ。中国茶の茶器はサイズが小さいので、食器棚に収めるとバランスが難しく、こういう箱に入れたほうが、収まりがいいのです」
 
「今日はお茶の時間を楽しもう」と思うとき、箱ごと取り出してテーブルへ。蓋を開いて、箱から茶器を取り出して……その一連の動作から、豊かな時間が始まる予感が高まります。「井藤さんのボックスは『大切なものを仕舞う箱』というイメージがあるのがいいですよね。思い出だったり、ときめきだったり、自分にとっての『宝物』を入れる箱。やっぱり曲線があるのがいいのかな。四角い箱にはない優しさが『いいなあ』と思います」

(OVAL BOX #5 サクラ)

左上の紫泥の急須は、友人が台湾旅行のお土産で買ってきてもらったもの。その下の白磁とガラスの急須、上段の白磁の茶杯は西荻窪のオーガニックジャスミン茶専門店「サウスアベニュー」で購入。中段の茶托は黒が井藤昌志さん、左の真鍮は中村友美さんのもの。下段の色絵の茶杯は台湾のアンティーク。



OVAL BOX #1 サクラ

裁縫箱はもっと大きなものを持っているそうですが、こちらはボタン付けなど、ちょっとした用事に取り出すミニ裁縫箱。「ハサミ好きで、こちらはこの箱に入るサイズをいろいろ探して見つけました。骨董市で購入したデッドストックです」。白い糸は、洋服のサンプルづくりのときに活躍するしつけ糸。ピンクッションは指にもはめられるミニサイズ(ただし、つけないほうが使いやすい)。ニッパーは小さくてなくしがちだけど、ないと困るレギュラーメンバー。革製の指抜きは、自作のもの。



OVAL BOX #1 三度黒

こちらは「fruits of life」の下げ札をつける安全ピンを。「ピンは袋入りを買うのですが、そのままだと取り出しにくいので、ボックスに入れて」。ネイビーの箱はむかし雑貨屋さんで購入したビンテージで、中には古いピンが。「ピンつながり」で、飾りとして一緒に入れているのだそう。



OVAL BOX #0 ミルクペイント ネイビー

かなり昔、個展で購入したネイビーのペイントのボックスは、スペアキー入れに。「自転車の鍵や、アトリエの鍵が入っています。うちのアトリエで友人にイベント貸しをすることがあるので、そういうときに箱ごと『はい、どうぞ』と渡せるのがいいんです」。



(プロフィール)
スタイリストのアシスタントを経て、1989年より雑誌『Olive』でスタイリストの仕事を始める。2018年より洋服ブランド「fruits of life」を立ち上げ、「生活の実り、豊かな暮らし」をテーマに、衣食住の提案も行っている。著書『おしゃれって いいもの』(文化出版局)が好評発売中。好きな言葉は「着道楽」。「装いについて考えていくことは、一生の楽しみであり、遊びであり、道でもあると思います」。 

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