第11回 「SPOONFUL」主宰
おさだゆかりさん



「北欧にも
オーバルボックスに似た、曲木のボックスがあるんですよ。こちらの材料は白樺ビスではなく、欧州アカマツの根っこで留められています。ストックホルムにある手工芸品を扱うお店『スヴェンスクヘムスロイド』にたまに入荷していて、見つけるたびにひとつ、またひとつと少しずつ集めています」 

山桜の経木を使ったオーバルボックスと比べ、厚みがあるのでずっしりと重く、けれども「通気性のよさ」「経年変化で味わいが増す」といった部分は共通していて、おさださんは紅茶葉の収納などにも活用しているそう。 

 自然素材を使った手仕事の生活道具は、北欧買い付けでの大きなテーマのひとつ。モダンなデザインのプロダクトも好きですが、一方で手仕事のアイテムが部屋に置いてあると、端正な造りのものでも、どこか温かみがあってほっとする。オーバルボックスの魅力も、そんなところにあるのではないでしょうか?」 

ブルーペイントのオーバルボックスは、今から十数年以上前、かつて蔵前にあった生活道具店「in-kyo」(現在は福島県三春町に移転)で、井藤さんの個展が開催された際に購入したもの。白のペイントと散々迷い、結局「北欧ブルー」のこちらに決めたのだそう。 

「井藤さんのオーバルボックスは、色を付けられるのが大きな魅力、すごいポテンシャルだと思います。もちろんナチュラルな木肌を生かしたタイプも素敵ですが、黒や白、赤や青などペイントを施したものは、色つきで紙やプラスチック製品などとはまったく違った独特の風合いと魅力があると感じます。インテリアのアクセントカラーとして使ったときも、やわらかくて奥行きがある。私も買い逃した白いペイントのボックスを、いつか買い足したいな……と思っています」 


OVAL BOX #1 ミルクペイント  水色

中に入れているのは、北欧のアンティークショップやミュージアムショップで見つけた
リングたち。「長期間に渡る買い付け旅では、着回しの効くシンプルな服が中心。その分、ポイントとなるアクセサリーで変化を付けます。貴石のアクセサリーは重いので、こういったカジュアルで軽いものが重宝しますね」。2段目の左右はストックホルムの近代美術館で購入したもの、それ以外はアンティークショップで。 



(プロフィール)
2005年北欧雑貨店「SPOONFUL」を立ち上げる。北欧への買い付け旅行は40回以上、現在はオンラインショップと予約制の実店舗を運営。著書に『北欧 ヴィンテージ雑貨を探す旅』(産業編集センター)など。好きな言葉は「keep in touch」。「英語で『連絡取り合おうね』という意味ですが、北欧の買い付け旅中に、友人や作家さんたちの別れ際に言われることが多くて。言われるとうれしく、ありがたさがこみ上げてきて……旅ができない今だからこそ、より心に響くフレーズです」 

 

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