第6回 「カフェ ブラディーボ/エッセンツァ」
尾上佐知子さん




尾上さんが将棋にはまったのは今から10年ほど前。たまたまテレビで棋士の方が「目隠し将棋」をしている様子を見て、「頭の中で対局を、すべて再現できているんだ」と感激したのがきっかけ。大阪・福島の将棋会館で開催する女性向け将棋教室に通い始め、一時は寝る間も惜しんで、夢中になっていたそうです。
「子ども時代から将棋を指し、アマ4段だった夫が『どうせ長く続かないだろう』と、レンガ色のオーバルボックスに入っている簡易な駒をプレゼントしてくれました。持っていたボックスにたまたま入れてみたら、運命的なサイズ感! 雑に入れると収まりきらず、結構ていねいに入れないとふたがしまらないんですよ(笑)」
ふたの裏に書かれた揮毫(きごう。棋士はサインなどとともに座右の銘や好きな言葉を書くことが多い)は、竜王戦の現地解説に来ていた、藤井猛九段によるもの。将棋に明け暮れた日々の、大切な思い出です。
「大きいほうのボックスに入った駒は、5年ほど前に、やはり夫からの贈り物。思いのほか続いていたので、『もう少しいい駒を』と思ってくれたんでしょうね。きちんと作られた駒は、指したときの音が違うんですよ! お抹茶用のお茶碗が入っていた袋に入れて、しまっています」
現在は将棋熱も、少し収まりつつあるという尾上さん。それでも将棋盤を取り出してみると、かつての情熱がよみがえります。「夫に手合せをお願いしても、彼が酔っぱらったとき1回しか、勝てたことがないんです(笑)」

 

(OVAL BOX #1 &#2 サクラ)


「用の美から生まれたオーバルボックスですが、私は『こんなもの、入れてるの!』という意外性、趣味性を楽しんでいます。中身はざっくばらんでも、ふたを閉じるとすーっと静けさが生まれる。そんなところが気に入っています」。将棋の駒以外には、帯留め入れ、茶箱として活用しているそう。ふたをこんな風に、駒台代わりにすることも。


(プロフィール)
東京でインテリアショップ勤務を経て、兵庫県芦屋川にある「カフェ ブラディーボ」とそれに併設する雑貨スペース「エッセンツァ」を、夫ともに2009年11月にオープン。好きな言葉は「謙虚であれ」「ひとさじのユーモア」。

BACK