Vol.14「『ちょこちょこ』食材で健康キープ」
Text : 田中のり子
9月に入ったとたん長雨が続き、「今年の夏はもう終わり」と、すっぱり宣言されてしまったような感じでしたね。涼しい日が続いていたのに、急に暑くなったりして、体調管理の難しい秋の入り口でした。
今回は私が気にかけている健康法のひとつをご紹介いたします。それは「ちょこちょこ混ぜ」のすすめです。私自身がそうなのですが、現代人は毎日忙しく、朝ごはんはパンだけ、昼は麺類だけ……といった具合に、1日の中で栄養価の高い食事をきちんととれる回数がなかなか少ない。なので、「体によいもの」を、ちょこちょこ普段の食事に混ぜていこうというものです。
少し健康意識が高い人なら、野菜やたんぱく質は気を付けて食べている方も多いようですが、特に現代の食生活は、ミネラル類が不足している人が多いそうです。ミネラル類とは、カルシウム、マグネシウム、リン、鉄、銅、亜鉛、ヨウ素など、体の組織をつくる原料となり、体の働きを維持・調整する働きを持つ栄養素のこと。ひじきやわかめなどの海藻類や、いかや干しえびといった魚介類、豆やナッツ類、雑穀類などによく含まれています。
鉄分に関しては、この連載でもしつこく何度も書いておりますが(笑)、これらが足りないと「原因は分からないけど、何となく調子が悪い」「何だか元気が出ない」という状況に陥りやすいのです。そして上記のような素材が、外食などでもなかなかとりにくいのは、何となく想像できるのではないでしょうか。「取り入れよう」と思っても、その選択肢が多くはありません。
そこで私が日常的に行っているのが、「ごはんにいろいろ混ぜる」という方法。実は私は白いごはんが大好物。間もなく新米の季節ですが、美味しいお漬物なんかがあろうものなら、もうごはんだけで何杯もいけてしまうほどなのです。しかし好きすぎるがゆえに、食べすぎてしまうのも悩み。普段パソコンの前で座り仕事をしているので、この年齢でそんなに糖質を食べる必要はないのです。
そんなとき、雑穀の登場です。白米に雑穀を混ぜると噛み応えが増し、自然と噛む回数が増えるため、咀嚼までに時間がかかります。そうしてよく噛んでいるうちに満腹中枢が刺激され、必要以上に食べることを防げるのです。私がよく使っているのは、黒米とキヌア。
黒米は「黒い食材」なので、漢方では「腎」によいとされていて、「腎が弱い」と診断されることが多い私は心がけて食べるようにしています。ビタミンB2やビタミンE、鉄分や亜鉛、リン、カルシウム、マグネシウムといったミネラル類も豊富に含まれています。スーパーフードとして有名なキヌアは、これまた鉄を始めとしたミネラルの宝庫で、貧血予防に役立つ葉酸もたっぷり含まれています。それ以外には、むくみに効く押し麦、食物繊維が豊富なもちきびなどを気分で加えています。
それ以外によくごはんと一緒に炊いているのが、干ししいたけ、干しえび、ひじきなどの食材。干ししいたけは干すことで生のしいたけよりも、栄養価がアップすることで知られていますよね。東洋医学的にも気血を補う食材と知られていて、やはり気を補い、食欲不振などにもよい干し海老と一緒に炊き込みごはんにしています。塩味を濃くつけなければ、うま味が強いだけで他のおかずをあまり邪魔せず、雑穀と同じようにすっと食べられます。
ひじきは梅干しと一緒に炊き込み、梅ひじきごはんとして食べるのがお気に入り。ひじきは海藻特有のクセがあるので、梅干しの酸味と合わせると、すっきりと食べられます。ひじきも補血素材として知られているので、貧血気味の人にはおすすめなのです。
どちらも雑穀と同じく「入れるだけ」なので(干ししいたけはスライスタイプを、ポキポキと手で折って入れます)、さほど気持ちの負担にならず、続けることができます。素材を細かく切ってから炊き込むものだと、やっぱり疲れちゃいますからね。
ごはん以外にも、炒りごま(鉄分やカルシウムが豊富)を和えもの料理にさっとふったり、カシューナッツや松の実(どちらも「補腎食材」として有名。カシューナッツは亜鉛が、松の実は鉄分が豊富)を炒めものに加えたり。1回の量は大したことがありませんので、すぐに健康効果が表れるものでもありませんが、ミネラル類は体内でつくることができないもの。コツコツ続けること、1年、3年、5年といったロングスパンで考えることが大事かな~と思っているのです。
(プロフィール)
衣食住、暮らしまわりの書籍の編集、雑誌のライターとして活動する。からだとこころに関する取材も多く、フラワーエッセンスや漢方について勉強中。『からだとこころを整える』(エクスナレッジ)がある。編集を担当した『1週間で必ず体がラクになる お手軽気血ごはん』(文化出版局)が好評発売中。